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時間が経つのも忘れて、ルヴァとアンジェリークは久々に話し込んでしまった。
アンジェリークが聖獣の宇宙を全力で支えている間は、扉越しに言葉を交わす時間も、そう長くは持てなかったから。
それを埋めるように、彼女の私室のソファに寄り添って座って。
――話が途切れてふいに二人の視線が交わった時、顔を寄せ合って小さく笑い合い、小鳥のように口付けを交わしたり。
そうこうしている内に、夜も更けてしまっていた。
恋人達の逢瀬も、終わりに近づこうとしている。
後ろ髪を引かれる思いで、ルヴァは外していたターバンに手を伸ばそうとした。
――が、その手を制止するように、彼の服の裾が小さく後ろに引っ張られる。
「アンジェ?」
「………」
慌ててアンジェリークの方を振り向くと、彼女は俯いたままルヴァの裾を掴んでいた。
声をかけてみても、可愛らしい唇をきゅっと引き結んだまま、何も言わない。
決して離そうとしない手から、彼女が自分に、まだ帰って欲しく無いと思っているのが伝わってくる。
まだ離れたくないと思っているのは、ルヴァも同じ事。
しかし―――…
「そんなに可愛らしく引き止められては、私の理性が持ちませんよ」
ルヴァが苦笑交じりに言うと、裾を掴む恋人のほっそりとした柔らかな手が、ピクンと震えた。
この時間に男―まして恋人―を引き止める事が、どういう意味なのか。
遠回しな表現ではあったが、ちゃんと伝わったようだ。
「……明日もお休みですし、また来ますよ」
そう言ってみても、アンジェリークは相変わらず裾を掴んで離さない。
俯いている為その表情は分からないが、耳まで赤く染まっていた。
正直言って、埒が明かない。
(かといって、無理に彼女の手を離したくもないんですけどねぇ……)
聖獣の宇宙の危機はまだ去った訳ではなく、守護聖が四人誕生したとはいっても、彼女の負担は決して軽くはないはず――そんな言い訳じみた思考が、ルヴァの頭の中を飛び交ってはいたが。
それら以上に、彼が迷っている理由があった。
二人は恋人同士ではあるが、まだそこまで関係が進展している訳ではなかった。
既に二人が『そういう関係』であれば、ここまでルヴァが迷う必要は無かっただろう。
真に愛する人だからこそ、心の準備が出来ていないまま行為に及ぶのは忍びない。
そう思って彼女が手を離してくれるのを待っていたが、このままではいつ理性の箍が外れるか分からない。
甘い胸の疼きと焦燥感が入り混じった中、状況を打開する為、ルヴァは心を決めて口を開く。
「アンジェ……私にどうして欲しいのか、言ってごらんなさい?」
「……………行かないで……」
静まり返った部屋の中、泣きそうな声で漏らされた呟きがルヴァの耳に届く。
「…それがどういう意味か、分かってますか?」
彼女の誘いに激しく心が乱されながらも努めて優しい声音で問うと、アンジェリークはこくん、と小さく頷いた。
「もっとルヴァ様と一緒に居たい…もっと、触れて欲しいんです……」
ああ…と小さく唸ったかと思うと、ルヴァはぐいっとアンジェリークの体を引き寄せて腕の中に閉じ込める。
緊張に身を縮める彼女の髪を優しく手で梳きながら、赤い耳元に触れそうなほど唇を寄せて甘く囁く。
「貴女もそう望んでくれるなら……朝まで側に居ましょう」
ルヴァの熱い吐息がアンジェリークの耳にかかり、彼の唇が耳をかすめる度、腕の中で身じろぎする。
「んっ…そうしてください……」
ルヴァはアンジェリークを抱き上げると、寝室へと姿を消した。
翌日の昼になっても、聖獣の女王陛下と神鳥の地の守護聖の姿を見た者は居なかったとか。
-Fin-
〜後書きという名の言い訳〜
ルヴァ様、お泊り決定(核爆)この後の展開は読んだ方のご想像にお任せするとして、『逢瀬』と繋がったお話になってます〜。あの後の話ですね(笑)
今回のネタの原型になってるのは実は、ルヴァコレリレー創作で某Cさんとやり取りしてたメールで出た「コレちゃんが誘う時ってどんな誘い方なんだろう?」という疑問に対して、私なりに出した回答でした(爆)
すいませんCさん、お送りしたメールの小話とネタかぶっちゃってて(←問題はそこじゃない)
某さんごめんなさい。ルヴァコレで突っ込んだ話が出来る方ほとんどいらっしゃらなくて、いつも壊れたメールばかり送り付けてしまってて……!!(激しく土下座)
恋人同士でイチャついてたら、裏に行きそうになるのは以下略という事でご容赦頂けるとありがたいです(^^;)
2007.8.3 UP
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